【Phase1-16】神の代理人は誰か
考察の前提
本記事は、特に以下の記事の結論を前提としている。未読の方は、先に一読をお勧めする。
【Phase1-11】神のシナリオとは何か - 謎解きは世界大戦のあとで
【Phase1-13】環境破壊8MSの首謀者は誰か - 謎解きは世界大戦のあとで
【Phase1-14】ブラジリアテロの実行犯は誰か - 謎解きは世界大戦のあとで
【Phase1-15】ジェストレスは何者か - 謎解きは世界大戦のあとで
神の代理人を名乗るバケモノ
フラグメント16において、藤治郎とセシャトは、共に神のシナリオを阻止したい側であるかのように描写されている。しかし、それでは両者とも三人の王たちと同じ立場ということになってしまい、対立点が不明である。
当ブログでは、これまでの記事で次のように推理してきた。
- 環境破壊8MSの首謀者は、藤治郎である。
- ブラジリアテロの実行犯は、藤治郎である。
- ジェストレスは、藤治郎の別人格である。
特に1番目は、藤治郎が黙示録の内容を実現させようとしていることの証拠とも考えられる。これだけの材料が揃っている以上、彼自身が「神の代理人」すなわち真の黒幕ではないかと疑うのが自然であろう。
挑発に乗ろうではないか
ジェストレス(≒藤治郎)は道化を装っているが、黒幕と考えると、言っていることは本気のようである。今や初見の印象とは逆転して、彼女の方が三人の王たちをいいように利用している構図が見えてくる。
三人の王たちが文明を破壊するつもりでやっていることは、全て「神」のお手伝いにしかなっていない。藤治郎の手のひらの上である。
その日が来たならね
しかし、三人の王たちはともかく、セシャトは非常に深いところまで事情を把握しており(地下研究所や叡智の存在等)、原理不明のチートスキルまで持っている人物である。いかに演技派の藤治郎とはいえ、彼女までをも出し抜いて神のシナリオを実行することは困難を極めるであろう。
プロメテウス騎士団の目的は、来る日に叡智を使って人類を救うこと。
第四次世界大戦を止めることが「その日」ではないと言うならば、人類を救うというのはつまり、仮想空間に移住させるという意味ではないのであろうか。それをグレイのような末端には教えていなかっただけで、セシャトも藤治郎側と考えるのが自然であろう。
裏切りませんとも
ところが、そのように仮定した場合、今度はフラグメント16の解釈が難しくなる。一方がもう一方を騙しているのならまだしも、両者ともその「ふざけた計画」に賛同する側ということになると会話の辻褄が合わないからである。そうなると、これはお互いがお互いに嘘をついていると考えるしかない。つまり、藤治郎とセシャトの両者が内心では神のシナリオを支持しているが、互いに信用しておらず牽制しあっている状況ということである。
セシャトは、自分の真の目的を藤治郎に知られても、彼がついてきてくれるかどうか不安だったのかもしれない。一方の藤治郎はそれを察知し、正しい意味で裏切らないと返答した。そのように考えれば全ての筋が通る。
結論
藤治郎とセシャトは、両者とも神の代理人またはその賛同者であり、互いにそれを隠している。
【Phase1-15】ジェストレスは何者か
ビスケットのアソート缶
ジェストレスの正体を探る糸口はこの場面。いかにも、ここ伏線ですよと言わんばかりの意味ありげな会話である。藤治郎はなぜ、ジェストレスの朝食などというプライベートなことを知っていたのであろうか。
最も自然な考え方は、ジェストレスとは藤治郎自身なのではないかと仮定してみることであろう。たまたま、その日の朝食をとったときにジェストレスの人格が表に出ていたのだと考えれば、それを知っていることに何の不思議もない。
藤治郎とジェストレスが揃って第三者と会話する場面が存在しないということも、この仮説を支持する根拠である。
ジェスター
セシャトは、藤治郎のことを「ジェスター」であると認識しており、また、ジェストレスという人物について言及することは一度もない。
三人の王たちに仕える宮廷道化師が女性でなければならないというルールはない。男性道化師であれば呼び名は当然、ジェスターである。
脳内嫁
言い方からして、ジェストレスは藤治郎の大事な人のようである。しかし本人ではなく、自分の中に作り出した仮想的な人格であると推測することができる。ゲームの設定上、自分の別人格との会話が可能であることは、都雄とミャオの関係によって明確に示されている。
おそらく藤治郎とセシャトは男女の仲であり、そのためにジェストレスの存在を隠している。考えようによっては浮気であるし、何より、自分の中に女性の人格があるなどと言ったら要らぬ誤解を招くのがオチである。しかし、三人の王たちとの関係についてはセシャトに言っておく必要があるため、藤治郎は自分のことをジェスターであると説明しているわけである。
元嫁
藤治郎とフィーアは面識があったことが描写されており、またジェストレスの髪の色はフィーアと同じである。したがって、フィーアが「元嫁」であり、藤治郎が彼女と別れた後、その思い出を元に作り出した人格がジェストレスであるという可能性が高い。
もっとも、ハードボイルドを気取っている藤治郎が、脳内では元嫁の幻を相手に一人芝居しているとするならば、前作の誰かさん並に痛い人物ではある。
結論
ジェストレスは、藤治郎の別人格である。
【Phase1-14】ブラジリアテロの実行犯は誰か
ディメンジョンコンテナの偶発的な事故
本編では、国際平和調停機構のテロはディメンジョンコンテナの事故であったということになっている。ではLATOのガントレットに誰かが細工していたのか、そんなことは許せない……というふうに話が進んでいく。しかし、我々読者はその前提を疑うべきである。
レトロなカメラ
藤治郎が撮影に使用したカメラは、博物館級のレトロな代物だという。これを藤治郎の趣味で片付けてしまって良いものだろうか。
TIPSを確認しよう。重要な部分がページを跨いでいるので、以下に再掲する。
<御岳フラッシュ(A)>
肉眼を経由した写真撮影が趣味で、無意識にベストアングルを探してしまう。
息子が大好き過ぎて、脳内の画像フォルダは都雄の0歳児からの写真でいっぱいだ。
御岳フラッシュ。作者が笑わせにきていると思いきや、なんとこれが謎解きのヒントになっているのである。
肉眼を経由して、脳内の画像フォルダに写真が格納される……それはアイカメラのことではないか。レトロカメラは肉眼ではなくレンズを経由して写真を撮るのであるし、フィルムを現像しなければならないので脳内にはコピーできない。
思い返してみれば、藤治郎がカメラを取り出す場面はここ以外に一つもない。シリーズのファンであればあるほど、脈絡なくレトロカメラが登場しても「ああ富竹だからね」で流してしまいそうなところであるが、それこそが作者の仕掛けた罠である。
高性能な爆薬
ただしここで、藤治郎のカメラがなぜ問題になるのかについては、とある前提知識が必要である。
掌サイズでは無理かもしれないが、飲料等を偽装して持ち込むことができる高性能な爆薬が、我々の現実世界にも実在する。その名はTATP。
ますます空港セキュリティーチェックが厳しくなってる本当の理由...驚くべき爆破テロの隠し手口アラカルト!(動画あり) | ギズモード・ジャパン
ちなみにTATP爆弾の信管は、なんとカメラのフラッシュ(携帯電話やスマートフォンに搭載されているものでも可)の電熱でも代用できちゃうという話ですから、いざ本当にセキュリティーチェックをすり抜けて持ち込まれてしまったら大変なことになっちゃうでしょうね...
これ以上の説明は不要であろう。
ヴァレンティナのお尻
本気で写真を撮るつもりであれば、もちろんこんなことにはならない。藤治郎は堂々と爆弾をセットしながら、自分がちょうどリジェクションシールドに守られる位置に移動しているわけである。
動画が一度きりしか再生できない形式だったのは、専門家に検証されたら手口がバレてしまうからに他ならない。しかし、極悪人の藤治郎も実の息子には良い顔をしたいし、「都雄たちがこれを見てもどうせわからないだろう」と彼は考えているのである。
結論
ブラジリアテロの実行犯は、藤治郎である。
【Phase1-13】環境破壊8MSの首謀者は誰か
楽譜は演奏できたんだろうな
この人たちは脳内で会話しているらしいのだが、そのくせボカした言い方をするので、初見では音楽の話かと思ってしまう。注意して読んでいないと、うまく意味を取れずに流してしまいがちな場面である。
会話が進み、楽譜の正体は「重圧縮ファイル」と明らかになる。つまり「楽譜は演奏できたんだろうな」とは「ファイルは解凍できたんだろうな」という意味であろう。陽気な男は、世界屈指のハッカーだったのである。
そうみたいだねぇ
当然、解凍された8MSの設計図は藤治郎も初見である。
謎のテロリスト
藤治郎は他人事のような言い方をしているが、盗んだ人間はまずファイルを解凍しなければならないはずであるし、そもそもお前は誰から手に入れたんだという話である。つまりこれは「僕が何を考えてこれを盗み出したと思う?」と遠回しに訊いているわけである。
相手の男もわかっていて調子を合わせる。「まさかアンタはテロリストじゃないだろうね」と言っているのであり、なかなか渋い会話である。この後ヴァレンティナが藤治郎を捕まえにくるが、それはもちろん、陽気な男があらかじめ当局に通報していたからであろう。
地下の研究所なら開発できる
環境破壊8MSを開発できる研究所なんてないという藤治郎に、陽気な男は「地下の研究所」という言葉を浴びせる。
藤治郎はフィーアたちの地下研究所と繋がっており、そこの研究者に設計図を渡して環境破壊8MSの開発をさせるつもりなのである。陽気な男がそんなことまで勘付いていたはずはなかろうが、藤治郎は偶然にも図星を突かれる格好となってしまい、わずかに狼狽を見せている。
結論
環境破壊8MSの首謀者は、藤治郎である。
【Phase1-12】三人の王たちは真の黒幕なのか
収穫祭の始まりだ
あからさまに、黒幕でございという描写をされる三人の王たち。
収穫祭という単語はセシャトの発言を思い出させるものであり、三人の王たちは「人道的」ではない方の勢力であるという印象が強くなる。だが、この一致はミスリードである可能性が高い。
三人の王たちの目的もやはり「文明を巻き戻す」ことであり、これはセシャトが言っていた内容と同じである。具体的には、文明の終端すなわち神のシナリオを阻止したいが故に、仮想空間に移住することが可能になるような技術を地上から消し去ろうという意図を持っているものと思われる。
神のシナリオの目的については、前回記事を参照されたい。
【Phase1-11】神のシナリオとは何か - 謎解きは世界大戦のあとで
天が力を貸して下さるとは
この場面が問題である。天が力を貸したとはどういうことか。
地震に関しては三人の王たちの計画ではなかったことが、ここで明確に示される。対地震8MSだけでなく、大気浄化や紫外線調整など多数の環境8MSが同時に故障しているが、これらも三人の王たちは関与していない可能性が高い。
嗤いの王は「文明が滅ぶ」と喜んでいるが、このままだと実際には地球が滅ぶのであり、それは神のシナリオ通りである。
オールイン
唐突なオールインは、天災お子様ランチのどの料理を誰が作ったかわかりにくくするための、作者の目眩しであると思われる。
彼らの望み通りに文明を巻き戻すとしても、それは地球が生きていることが前提であろう。8MSが復旧できなければ数十年で地球が死んでしまい、全球凍結まであるというのに、事の重大性を彼らは理解していないようである。
結論
三人の王たちは、真の黒幕ではない。
【Phase1-11】神のシナリオとは何か
聖イオアンニスの黙示録
フラグメント16にてその存在が明らかになる「聖イオアンニスの黙示録」。これは我々読者の現実世界にある「ヨハネの黙示録」のことである。キコニア世界では、我々の世界と違って正典扱いされていないことになっている。
死も老いも、悲しみも苦しみも何もない
ヨハネの黙示録の第21章には、次のような節がある。
また、御座から大きな声が叫ぶのを聞いた、「見よ、神の幕屋が人と共にあり、神が人と共に住み、人は神の民となり、神自ら人と共にいまして、人の目から涙を全くぬぐいとって下さる。もはや、死もなく、悲しみも、叫びも、痛みもない。先のものが、すでに過ぎ去ったからである」。
太字部分が、この場面の描写と符合している。約束の地を実現することが、神のシナリオの最終目的であると思われる。
全人類が肉の殻を捨て、地下研究所のような仮想空間へ移住してしまえば理想郷が実現する。前作の黄金郷に相当する内容と考えればわかりやすい。
地下研究所が仮想空間であることについては、前回記事を参照されたい。
【Phase1-10】地下研究所はどういう場所か - 謎解きは世界大戦のあとで
なお、この計画には相当の資金が必要と思われるが、黒幕が特定の場所に地震を起こせるのであれば、地震クジで調達することが可能であろう。
ここが現実の世界だったらいいのにな
実はこれは、都雄が最終的に望んでいることである。最終章では作者が本気で泣かせにくるので、我々読者も冷静な思考能力を失いがちであるが、この場面の会話こそが物語の核心に触れる内容と思われる。
「サーバーの中に移住するか」というのがそのまま答であり、彼らは意図せずして、神のシナリオに賛同してしまっているわけである。
お前が望んでた世界なんだぜ
ここまで考察できれば、本編ラストの意味も見えてくる。黒背景のモノローグはジェイデンの心の内であり、彼が実際に話している相手はミャオである。そして青い身体は、地下研究所の少女たちと同様、ここがすでに現実世界ではないことを示唆している。
都雄は「仮想空間が現実の世界であること」を確かに望んでいたし、ジェイデンはミャオと一緒に行くと約束していた。神のシナリオは実現されてしまったのである。
結論
神のシナリオとは、全人類を仮想空間に移住させることである。
【Phase1-10】地下研究所はどういう場所か
平らな頭
4人の裏切り者については一応の解答が出せたので、ここからはガントレットナイト以外にも焦点を当てていく。
フィーアの連れの男は奇妙な姿になっていた。額の中心から輪切りにしてしまったのなら、脳が入るスペースがない。これは逆に言えば、ここはそのような姿でも活動できる場所であるというヒントであると考えられる。
どうもフィーアの趣味か何かで、平らな頭にされてしまったらしい。相手の男のセリフはないが、それを嫌がっている様子ではない。
人ならざる者たちの世界
魔女のお茶会へようこそ、とでも言いそうな雰囲気を醸し出すフィーア。
簡単に言ってしまえば、ここは現実世界ではないということであろう。例えばそれは、巨大なコンピュータの中であると仮定してみよう。
仮想空間に移住したのならば、現実には死んでいるのであるし、発見された死体がフィーア・ドライツィヒ本人であっても矛盾はない。
また、物理的にはすでに死んでいるので、研究員が普通の方法で死ぬことはできない。これは他の伏線とも符合する。
尊厳を取り戻す機械
ところが、仮定が正しいとすれば、マリオの機械をどのように解釈すれば良いのかが問題となる。この機械は、現実世界で地震を発生させているように描写されているからである。
普通に考えれば、仮想空間である地下研究所から現実の地球に影響を与えることはできないはず。だからフィーアは、このような機械が完成するはずはなかったと考えているわけである。
ミッシングリンク
ならば、フィーアの言うミッシングリンクとはつまり「現実世界へのリンク」を意味するのではないであろうか。
ミッシングリンクを埋める鍵は、グレイが持ち出していた「叡智」。セシャトは煙に巻くようなことを言っているが、ここでは差し当たり、地下研究所から現実世界にアクセスするための何かであると解釈しておきたい。
セシャトか藤治郎がマリオの手助けをしたと考えるのが自然である。
なお、「取り戻す機械」は仮想空間における幻想描写のようなものであって、実際にはそのような機械は存在しないと考えておいた方が良さそうである。マリオが完成させた研究の正体は、おそらく環境破壊8MSであろう。
結論
地下研究所は、コンピュータの中の仮想空間である。