謎解きは世界大戦のあとで

キコニアのなく頃に考察

【ひぐらし令-4】前原邸で何が起こったのか

圭太郎発症の可能性

「令」ではどういうわけか、精神がおかしくなった人物は、首ではなく側頭部を掻きむしる行動を取ることが多い。詳細は不明ながら、入江の反応から推測すると、雛見沢症候群の新型か何かであろうと思われる。

そして、鬼熾し編の圭太郎の部屋は髪の毛だらけ。これは本人が頭を激しく掻きむしったためであろう。

したがって、圭太郎は雛見沢症候群、または類似の病気を発症している可能性がある。彼の視点で描かれているここから先の描写には嘘が混じっているかもしれず、鵜呑みにすることができない。それゆえ、前原邸事件は推理難易度が高めになっている。

玄関チャイムの違和感

圭太郎が二階の自室で梨花と電話をしているとき、玄関チャイムが鳴らされる。家族の誰も出ないようなので、圭太郎が一階に降りて応答することになる。

玄関を開けるとポラリスの面々に踏み込まれるわけだが、このとき、圭太郎の祖父母が一階にいたように見える描写が少々気にかかるところである。

玄関から声が届く場所に祖父母がいたのであれば、なぜ先ほど、チャイムに応答して出てこなかったのだろうか。

首を掻きむしる人たちの違和感

ポラリスの面々は、圭太郎を椅子に縛りつけ、彼の祖父母を殺害した後、一斉に首を掻きむしり始める。

しかし、ここでも気にかかることがある。もう一方の星渡し編では、首を掻いている人物は一人もいなかった。圭太郎がそうであるように、掻きむしるなら今回は首ではなく頭ではないのだろうか。

圭太郎の方がおかしいのか?

ひぐらし」無印の「鬼隠し編」では、圭一を殺そうとしているように見えた仲間たちが実は善意という真相であった。それに準じて考えてみると、おかしくなっているように見えるポラリスの面々が実は正常という可能性も浮かんでくる。疑心暗鬼に駆られた圭太郎が幻覚を見ているというシナリオである。

仮に、全てが裏返しであるとしたら、祖父母を殺害したのは圭太郎という真相だってあり得なくはない。この場合、玄関チャイムが鳴った時点ですでに殺されていたから圭太郎が出たというわけである。

……しかし。上で二つの違和感を挙げてはみたが、それらは圭太郎の主観を疑う根拠としては弱い。祖父母はたまたま手が離せなかったのかもしれないし、ポラリスが首を掻きむしるのは地域差か何かかもしれない。ここは逆に、圭太郎の主観が信用できることの根拠を探すべき場面なのである。

やはりポラリス側がおかしい

この場面には、圭太郎の幻覚と考えると説明のつかないことがある。まず、くるるは「ミアプラキドゥス」という星の輪での名前を口にしている。

この名前は星渡し編にて正しいことが確認できるのだが、鬼熾し編の圭太郎には知り得ないはずの情報である。それに加え、ポラリスの面々は興味深いことを口にしている。

「聖母さまのお姿に悪口雑言を書き連ね、あまつさえ列をなして引き裂く」というのは、上記のくるるの台詞と合わせて考えると、綿流しで行われた供養の儀式のことを指しているらしいことがわかる。

くるるは、供養の儀式の後に異常な反応を示していた。この場面はくるる一人の描写であるため、嘘である可能性はないと考えて良いだろう。この符合が、圭太郎の主観を信用するための手掛かりとなる。

丸竹は何をした?

丸竹はくるるに、例えば次のように教えたのではないか。「村人たちは綿流しという祭りで、ポラリスの聖母を貶めるおぞましい儀式を行なっている。圭太郎の誘いに乗ったふりをして祭りに潜入し、その目で確かめてみなさい」。

口先だけで騙したのか、何かトリックを仕掛けたのかはわからないが、儀式の布団が聖母の姿に見立てられているとくるるは思い込んだ。彼女一人が思い込みさえすれば、ポラリス全員にそのように伝わるわけである。

また、おそらく丸竹はこのようなことも吹き込んだだろう。「古手家の元巫女が、全ての不幸は他者との縁にあるというポラリスの教えを崩し、内部崩壊させようと画策している。圭太郎はその手先だ」。

くるるは圭太郎の通話履歴を見て、梨花の名前があることを確認。ここでいよいよ、丸竹から教えられたことが正しかったと確信しただろう。

以上のように説明がつくので、圭太郎の幻覚説よりもこちらの方が信憑性が高いという判断になる。読者に一度、圭太郎の主観を疑わせておいて、一周回って見たままが正解という意地悪な仕掛けである。

結論

前原邸で起こったことは描写された通りであり、圭太郎の幻覚ではない。