謎解きは世界大戦のあとで

キコニアのなく頃に考察

【ひぐらし令-5】まとめと雑感

ひぐらし令の考察まとめ

今回をもって「ひぐらしのなく頃に令」の考察記事は終了としたい。「令」が完結する頃にまた、答え合わせの記事を投稿する予定である。他にも細かい謎はいくつか残っているが、よくわからないというのが正直なところ。

当ブログから提出する回答は次の通り。

  • 黒幕は丸竹である。
  • 星渡し編では、喜作が梨花を殺害した。村長は喜作の共犯者である。
  • 鬼熾し編では、補佐役の男が喜作を殺害し、自殺した。その後、丸竹が喜作の死体を隠した。
  • 前原邸で起こったことは描写された通りであり、圭太郎の幻覚ではない。

他はともかく、黒幕は外しようがないだろうという感想である。丸竹を疑っている読者は少なくないようであるし、今回は、黒幕だけなら多くの人が当てられるような難易度に調整されているのかもしれない。

ちなみに、他の黒幕予想としては、喜作、沙都子、希比呂、梨花(!?)等の説が見受けられた。予想は自由なので好きなように楽しめば良いのだが、あくまでも個人的意見として、その中に十分説得力のある説は見当たらない。

惨劇回避のために

圭太郎はループの記憶を継承していないようなので、解答編で惨劇を回避するためには、梨花が適切な助言を行わなくてはならない。

梨花は、両陣営の対立を煽っている黒幕の存在に気付いていそうではある。しかし、圭太郎から電話で聞いた情報だけで、それが丸竹ではないかと推理するのは困難であろう。あとは喜作との会話内容次第だろうか。

  • 鬼熾し編「ポラリスには用心して、村の人の話に耳を傾けなさい」
  • 星渡し編「ポラリスの立場からも見てみたらどうかしら」

圭太郎は梨花の指示通りに動いてくれるが、以上の助言はいずれも失敗に終わっている。それを踏まえて、解答編の梨花は何と言うのかに注目である。

許せる嘘と許せない嘘

もう一人、解答編のキーパーソンになりそうなのが希比呂である。彼は、人の嘘を見抜くことができるという母親譲りの能力を持っているらしい。

希比呂は鬼熾し編では、圭太郎と一緒に丸竹の話を聞いていた。その際、もしかすると丸竹が嘘をついていることに気付いたかもしれない。しかし、その嘘は「僕も、平和なこの村が好きなんだ」という好意的な内容であった。だから彼は「許せる嘘」だと判断し、何も言わなかったのではないだろうか。

そうだとすれば、丸竹が怪しいと一番に指摘できそうな人物は希比呂ということになる。丸竹に向かって「嘘だッ!!!」と言ってくれたら痛快である。

最後に

当ブログの記事が、物語の理解とさらなる考察に役立てば幸いである。

【ひぐらし令-4】前原邸で何が起こったのか

圭太郎発症の可能性

「令」ではどういうわけか、精神がおかしくなった人物は、首ではなく側頭部を掻きむしる行動を取ることが多い。詳細は不明ながら、入江の反応から推測すると、雛見沢症候群の新型か何かであろうと思われる。

そして、鬼熾し編の圭太郎の部屋は髪の毛だらけ。これは本人が頭を激しく掻きむしったためであろう。

したがって、圭太郎は雛見沢症候群、または類似の病気を発症している可能性がある。彼の視点で描かれているここから先の描写には嘘が混じっているかもしれず、鵜呑みにすることができない。それゆえ、前原邸事件は推理難易度が高めになっている。

玄関チャイムの違和感

圭太郎が二階の自室で梨花と電話をしているとき、玄関チャイムが鳴らされる。家族の誰も出ないようなので、圭太郎が一階に降りて応答することになる。

玄関を開けるとポラリスの面々に踏み込まれるわけだが、このとき、圭太郎の祖父母が一階にいたように見える描写が少々気にかかるところである。

玄関から声が届く場所に祖父母がいたのであれば、なぜ先ほど、チャイムに応答して出てこなかったのだろうか。

首を掻きむしる人たちの違和感

ポラリスの面々は、圭太郎を椅子に縛りつけ、彼の祖父母を殺害した後、一斉に首を掻きむしり始める。

しかし、ここでも気にかかることがある。もう一方の星渡し編では、首を掻いている人物は一人もいなかった。圭太郎がそうであるように、掻きむしるなら今回は首ではなく頭ではないのだろうか。

圭太郎の方がおかしいのか?

ひぐらし」無印の「鬼隠し編」では、圭一を殺そうとしているように見えた仲間たちが実は善意という真相であった。それに準じて考えてみると、おかしくなっているように見えるポラリスの面々が実は正常という可能性も浮かんでくる。疑心暗鬼に駆られた圭太郎が幻覚を見ているというシナリオである。

仮に、全てが裏返しであるとしたら、祖父母を殺害したのは圭太郎という真相だってあり得なくはない。この場合、玄関チャイムが鳴った時点ですでに殺されていたから圭太郎が出たというわけである。

……しかし。上で二つの違和感を挙げてはみたが、それらは圭太郎の主観を疑う根拠としては弱い。祖父母はたまたま手が離せなかったのかもしれないし、ポラリスが首を掻きむしるのは地域差か何かかもしれない。ここは逆に、圭太郎の主観が信用できることの根拠を探すべき場面なのである。

やはりポラリス側がおかしい

この場面には、圭太郎の幻覚と考えると説明のつかないことがある。まず、くるるは「ミアプラキドゥス」という星の輪での名前を口にしている。

この名前は星渡し編にて正しいことが確認できるのだが、鬼熾し編の圭太郎には知り得ないはずの情報である。それに加え、ポラリスの面々は興味深いことを口にしている。

「聖母さまのお姿に悪口雑言を書き連ね、あまつさえ列をなして引き裂く」というのは、上記のくるるの台詞と合わせて考えると、綿流しで行われた供養の儀式のことを指しているらしいことがわかる。

くるるは、供養の儀式の後に異常な反応を示していた。この場面はくるる一人の描写であるため、嘘である可能性はないと考えて良いだろう。この符合が、圭太郎の主観を信用するための手掛かりとなる。

丸竹は何をした?

丸竹はくるるに、例えば次のように教えたのではないか。「村人たちは綿流しという祭りで、ポラリスの聖母を貶めるおぞましい儀式を行なっている。圭太郎の誘いに乗ったふりをして祭りに潜入し、その目で確かめてみなさい」。

口先だけで騙したのか、何かトリックを仕掛けたのかはわからないが、儀式の布団が聖母の姿に見立てられているとくるるは思い込んだ。彼女一人が思い込みさえすれば、ポラリス全員にそのように伝わるわけである。

また、おそらく丸竹はこのようなことも吹き込んだだろう。「古手家の元巫女が、全ての不幸は他者との縁にあるというポラリスの教えを崩し、内部崩壊させようと画策している。圭太郎はその手先だ」。

くるるは圭太郎の通話履歴を見て、梨花の名前があることを確認。ここでいよいよ、丸竹から教えられたことが正しかったと確信しただろう。

以上のように説明がつくので、圭太郎の幻覚説よりもこちらの方が信憑性が高いという判断になる。読者に一度、圭太郎の主観を疑わせておいて、一周回って見たままが正解という意地悪な仕掛けである。

結論

前原邸で起こったことは描写された通りであり、圭太郎の幻覚ではない。

【ひぐらし令-3】鬼熾し編の犯人は誰か

謎のモブキャラが死亡

前回同様、ここで言う犯人というのは「鬼隠し」の犯人のことである。鬼熾し編ではラストに圭太郎絡みで別の事件が発生するが、それについては回を改めるとして、今回は綿流しの晩の事件について考察していく。

この事件で死亡するのは、公由喜作の補佐役というポッと出の人物。また、星渡し編と同様、喜作が行方不明となる。

警察の見解は自殺

この事件については、最終話にて魄姫が、警察の見解を沙喜子に伝えている。

その場は「ポラリスの仕業に違いないのに、自殺として処理されてしまうなんて」と言わんばかりの空気であるが、令和の日本警察が自殺と判断したのであれば、実際に自殺であった可能性は高いだろう。

というか、死因からして、これが他殺というのは考えにくいのである。熊谷は「誰かに飲まされたならともかく…」などと言っているが、どうやったら他人に農薬を3本も飲ませることができるというのだろうか。殺したいなら首でも絞めたほうが手っ取り早いし、自殺か他殺かわからないようにしたいとしても、その辺の崖から突き落とすとか、もっとマシな方法があったはずである。

しかし、補佐役の男に自殺の兆候はなかったという。「晩婚で、つい最近生まれたばかりの子供の写真を周りに見せては嬉しそうにしていた」。それでも状況的に自殺なのであるから、その動機が突然発生したという話になる。それは例えば、突発的に人を殺してしまった等の場合であろう。

補佐役が喜作を殺した?

鬼熾し編は、星渡し編と異なり、綿流しの6日後まで物語が続く。

それだけの時間が経っても喜作は帰ってこないし、逆に、容疑者として捕まったというような知らせも入ってこない。となると、これはやはり殺されている可能性が高いだろう。犯人を特定する材料はないが、ここで補佐役の男が殺したものと仮定してみると、自殺の動機については説明がつく。

鬼熾し編でも、喜作が頭を掻いているように見える描写が存在する。精神的におかしくなった喜作と補佐役が口論になり、何かの弾みで……という可能性は否定できない。

また、これはメタ推理に近くなってしまうが、シナリオ進行の都合上「家族以外で喜作に近い人物」が殺人者である必要があったために、喜作の補佐役というキャラクターが突如出てきたとも考えられる。

喜作の死体はどこへ行った?

ところが、このシナリオでは、喜作の死体が見つからない理由がわからなくなってしまう。死体を隠すのは、犯行がバレたくない犯人が行うことであって、罪悪感に耐えられず自殺するのであれば、死体を隠す必要はないからである。

しかしここで、第0話冒頭の描写を思い出したい。

圭一と魅音に何があったのかは推測するすべがないが、重要なのは「何者かが車で圭一の死体を運んでいた」という点である。そして「鬼隠しにする」動機があるのは、黒幕の丸竹だけである。丸竹は基本的に殺人はしないようだが、死体遺棄は彼にとって許容範囲の犯罪なのかもしれない。

丸竹という第三者の介入があったならば、「本来は死体が二つあったのだが、鬼隠しにするため、喜作の死体が隠された」という結論になる。なかなかアクロバティックな論理展開であり、この説が正しいと断言できるほどの確証はないものの、以上で一応の辻褄を合わせることが可能である。

結論

鬼熾し編では、補佐役の男が喜作を殺害し、自殺した。その後、丸竹が喜作の死体を隠した。

【ひぐらし令-2】星渡し編の犯人は誰か

衝撃の展開

記事タイトルはネタバレに配慮した。ここで言う犯人というのは、具体的には「鬼隠し」の殺害を実行した人物のことである。鬼熾し編よりも星渡し編の方が推理難易度が低そうなので、こちらを先に片付けたい。

星渡し編の終盤にて、病院にいる梨花が殺害され、喜作が行方不明となる。今回はこの事件について考えるのだが、これはラストの動画での言及が重要な手掛かりとなる。

動画内に「村の守り神の巫女が惨殺!! その意外な犯人」という文字が見える。つまり、この動画の公開時点ですでに容疑者が特定されており、少なくとも一般の視聴者にとっては意外な人物であるということである。

当ブログでは、雛見沢とポラリスの対立を煽っている黒幕が丸竹であるという前提で考察しているが、殺人犯は丸竹ではないだろう。どこぞのフリーライターが犯人だったとして「意外な犯人」というのは違和感があるし、そもそも、彼が捕まってしまっていたら、こんな動画も作れないはずだからである。

犯人はポラリスの人間か?

沙喜子と村人たちはこの事件をポラリスの仕業だと思い込み、さらなる惨劇を起こしてしまう展開となる。

しかし、幹部のカノープスは事件について知らない様子であったし、これは演技には見えない。また、ポラリスの誰かが犯人であったらやはり「意外」ではないし、動画はポラリスを非難するトーンで作られているのだから、その場合、犯人に言及しないのは不自然である。したがってこの可能性は低い。

犯人は公由村長か?

丸竹でもポラリスでもないとなれば、残る可能性は「雛見沢の人間」ということになる。しかも、病院への交通手段が必要であるから、自家用車を持っている大人の犯行である可能性が高い。そのように考えると、容疑者として浮かんでくるのは、車を運転している描写がされていた公由村長である。

村長であれば「意外な犯人」という条件にこの上なく合致する。圭太郎と遭遇した時点で、推定22時前後。そのような時刻に、村長は車を運転してどこかに行こうとしていたのだろうか。

ところが、村長は遅くとも明け方には公由邸に戻っている。梨花の殺害方法は「滅多刺し」ということだから、犯人は返り血を浴びていなくてはおかしいのだが、村長は着替えていないようだし、沙都子が怪しんでいる様子もない。この点で、村長の容疑はやや薄くなる。

犯人は喜作か?

殺人事件が起こって誰かが消えたという場合、まず消えた人物を疑うのが普通の考え方である。

目立たないながら、喜作には頭をガリガリと掻いている描写もあり、他の村人と同じようにおかしくなっている可能性が十分にある。

喜作を疑うもう一つの理由は、ラストの動画にて「オヤシロさまの祟り」が紹介されていない点である。殺された梨花についての言及はあるのに、いなくなった喜作については触れられていない。この不自然さは、「意外な犯人」が喜作であった場合には解消される。この意味で、最も犯人である可能性が高いのは喜作である。

そして犯人が喜作だとすれば、おそらく、父親である村長も無関係ではない。

村長の車には他にも誰かが乗っていた。これが喜作だったのではなかろうか。村長は共犯者であり、車を運転して喜作を病院まで送った。このように考えることで、同乗者の伏線は綺麗に回収可能である。

動機は?

正常な精神状態でないとはいえ、喜作や公由村長が梨花を殺害する動機はあるだろうか。この疑問に対しては、黒幕の丸竹が、次のようなことを吹き込んだと考えておきたい。「梨花ポラリスの味方をしており、雛見沢を乗っ取る工作のために、圭太郎を手先として使っている」。これは部分的に真実を含んでいるため、喜作と口論になった場合には梨花が不利である。

結論

星渡し編では、喜作が梨花を殺害した。村長は喜作の共犯者である。

【ひぐらし令-1】黒幕は誰か

令和の惨劇

キコニア考察用に開設したブログであるが、Phase2のリリースが遅れていることもあるので、関連作品「ひぐらしのなく頃に令」の考察もこちらでやっていきたい。

ひぐらしのなく頃に令」は先日、「鬼熾し編」および「星渡し編」それぞれコミックス2巻目が発売された。合計4巻にて出題編終了、解答編は来年春から連載開始の予定であるらしい。間が空いているのは、その間に考察を楽しんでほしいという意図であろう。

祭りの日の動画

推理のとっかかりとして、星渡し編のラストから見ていこう。星渡し編は、何者かによってネットにアップロードされた動画にて幕を閉じる。ここで引っかかるのは、ポラリスの祭りの動画が含まれていることである。

これは誰が撮影したものかと考えると、それが可能だった人物は丸竹しかいないことがわかる。

丸竹が撮っているのは写真であって動画ではないではないかと思うかもしれないが、その点はあまり問題にならない。時は令和であり、丸竹が持っているのも当然デジタルカメラであろう。今時のデジカメには、一眼タイプであっても当然のように動画撮影機能がついているし、この場面に限れば、静止画をスライドショーのようにして動画を作ったと考えてもよろしい。

となると、動画を提供したのは丸竹でほぼ確定であるし、それどころか語り手も丸竹本人である可能性が高い。ところが丸竹は、圭太郎と話した際に「ポラリスが世間で言われているような、怪しいカルトなんかじゃないって事を知ってもらいたくてきたんだ」と語っている。ラストの動画は趣旨が真逆であるため、これに丸竹が関与しているとなると怪しくなってくるわけである。

嫌がらせの犯人

もう一つの重要な手掛かりは、落書き等による嫌がらせである。

丸竹はこの写真を何気なく見せているが、ポラリスのメンバーはこれを発見した際「カノープスさんに報告して、家族に見られる前に処理しましょう」と語っており、この状態になっていた時間は相当短かったはずである。もちろん、丸竹がたまたまタイミングよく通りかかったのかもしれないが、もしも丸竹自身が犯人であったならば、撮影するのは簡単だっただろう。

また、鬼熾し編の方では、これと同じような落書きが雛見沢側でも頻発しているという描写がある。手口がそっくりであるため同一犯の可能性が高いことを考慮すると、雛見沢側でもポラリス側でもない人間が怪しい。すなわち、その時々でスタンスを変えているように見える丸竹が最有力容疑者である。

動機は?

では、丸竹が黒幕であると仮定してみて、その動機は何だろうか。

これはおそらく、鬼熾し編の圭太郎の推理が正しい。雛見沢とポラリスの対立を煽り、大きな事件が発生することを期待する。それでなぜ丸竹が嬉しいのかといえば、最も単純な回答はカネである。フリーライターとして、日本中が注目するような惨劇を題材として本でも書けば、ベストセラーを狙えるだろう。

実際には違う動機が隠されている可能性もあるが、丸竹黒幕説の説明としては以上で十分と考える。消去法的ではあるが、今回説明した内容を踏まえると、丸竹以上に疑わしい登場人物はいないのである。当ブログでは、丸竹が黒幕であるという前提のもと、数回に渡って他の謎の考察を進めていく。

結論

黒幕は丸竹である。

【Phase2-preview】ブルーを殺したのは誰か

Phase2の一部が公開

16ヶ月ぶりのブログ更新である。現実世界で起こっている色々を含む諸事情により、「キコニアのなく頃に」Phase2のリリースは相当遅れており、謎の答え合わせにはまだまだ時間を要しそうな情勢である。

しかし先日、小冊子にてPhase2の一部テキストが先行公開されたので、それについての考察をこの機会に追記しておこう。未読の方は、当記事の前に、以下でダウンロードできるPDFをお読みいただきたい。

booth.pm

わざと隙を残してくれてる

公開部分のラストが秀逸に思えたので、まずはそこから見ていきたい。

 ……やはり、団長閣下が言うように、……こいつはヤツらの手心なのか?

 あまりにもワンサイドゲームになるとつまらないからと、わざと隙を残してくれてるのか……?

 

【藤治郎】「それともまさか、また、………本当は構って欲しいから、ちらちらと隙を見せてるなんて、……思春期の女の子みたいなことを考えてるんじゃないだろうな……?」

これは「藤治郎が、敵である何者かに思いを馳せている」というような場面であるが、メタ的に考えると、これは我々考察勢と作者との関係を思わせる。

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まず、「わざと隙を残してくれてる」というのは、Phase1に散りばめられていた数々の手がかりを想起させる(……そんなことを言って、当ブログの推理が全然的外れだった場合はみっともない話であるが)。

次に、「また」「思春期の女の子みたいなことを考えてる」というのは、「うみねこのなく頃に」の出題を想起させる。そのような目で読み直せば、遡って「あまりにもワンサイドゲームになるとつまらない」というのも、同様に含むところがありそうである。

そのようなわけで、これは作者が、Phase2の前にもっと我々に構ってほしくて投下した新ネタ……という自虐を重ね合わせているようにも読めるのである。仮にそうであれば、当記事が、作者の期待に少しでも応える内容になっていることを願う次第。

赤き海の星

さて本題。今回公開されたシナリオを要約すると、水質浄化8MSに感染して色を赤くしてしまうウィルス「レッドダイ」をハッカー「グリンリーパー」に開発させた、藤治郎以外の何者かがいるという内容になっている。

その理由について、作中では次のように述べられている。

【担当者】「そいつは俺にこう言った。お前がグリーンを殺したいように、自分はブルーを殺したいってな! 8MSで生み出された偽りの、海の青が気に入らねぇって言うんだ!」

大金を投じて、グリーンだけでなくブルーをも殺させた人物は、海の青がお気に召さなかったらしい。グリンリーパーの当初の予定通り、グリーンだけを殺した場合は紫になりそうなものだが、それではご不満のようである。つまり、この奇妙な依頼の発注者には、海を赤くしなければならない動機が存在するということになる(メタ的には、緑と青はそれを隠すための煙幕であろう)。

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海水が赤くなったという直接的な描写はPhase1には登場していないが、読了後にタイトル画面の背景が赤い惑星になること、および、関連作品「ひぐらしのなく頃に業」に登場する「赤き海の星」という台詞に符号する。

黙示録再び

なぜ海を赤くしなければならないのかというと、それはズバリ、神の計画たるヨハネの黙示録にそのように書かれているからである。

ヨハネの黙示録(口語訳) - Wikisource

以下は、第16章からの引用である(太字は当ブログによる)。

それから、大きな声が聖所から出て、七人の御使にむかい、「さあ行って、神の激しい怒りの七つの鉢を、地に傾けよ」と言うのを聞いた。

そして、第一の者が出て行って、その鉢を地に傾けた。すると、獣の刻印を持つ人々と、その像を拝む人々とのからだに、ひどい悪性のでき物ができた。

第二の者が、その鉢を海に傾けた。すると、海は死人の血のようになって、その中の生き物がみな死んでしまった。

第三の者がその鉢を川と水の源とに傾けた。すると、みな血になった

このような記述があるため、神のシナリオの演出として、海や川の水を血のように赤くする手段が必要というわけである。もちろん、それを必要とした何者かこそが「神の代理人」すなわち全ての黒幕であるに違いない。

黒幕はガントレットナイト?

グリンリーパーは、発注者のセルコンに侵入してその正体を知ろうとするが、瞬時に拒否されて失敗する。

【藤治郎】「……これは、……旧世代の数字じゃないな。……エースクラスだ」

【担当者】「とんでもねぇ、P3値だぜ?! こんな数字を出せるヤツがいたら政府が放っておく訳がねぇ! そこで俺は悟った。こいつはガントレットナイトだ、ってな!」

わざわざ「旧世代の数字じゃない」と断っているのは、藤治郎自身は除外されるという念押しのためであろう。もちろん、藤治郎が別人を装って、同じ人物に再度接触するような回りくどいことをする理由もありそうにない。

だが、そうだとすると、容疑者は現役のガントレットナイト、実質的には都雄たち24人に絞られることになる。当ブログではPhase1時点で「藤治郎が黒幕である」と推理しているが、ガントレットナイトの誰かが黒幕だということになれば、これは全く話が違ってきてしまう。

さあ困った。都雄たち24人の中に、第九最上騎士団のスパイが4人も潜んでいるだけでなく、実は黒幕までいる……そんな可能性があるだろうか?

もっとも疑わしい人物

ここで、現役ガントレットナイトの他にも一人だけ、並外れたP3値を持っていることを示唆されている人物がいたことを思い出そう。それは、ABN国際空港の監視システムに侵入し、軽々と証拠隠滅をしてみせたセシャトである。現状、もっとも疑わしいのは彼女であろう。

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以下の記事の結論は「藤治郎とセシャトは、両者とも神の代理人またはその賛同者であり、互いにそれを隠している」というものであった。

【Phase1-16】神の代理人は誰か - 謎解きは世界大戦のあとで

今回公開された場面は、藤治郎にとって、セシャトが味方であるという確信を得ていない時点の出来事と解釈すれば、その仮定に矛盾しない。

つまり、「黒幕はP3値が高い人物」→「ガントレットナイトに違いない」という作中の流れは、作者が我々に仕掛けたミスリードなのではないだろうか。もちろん、Phase2本編の展開によっては、今回の推理とは整合しなくなる可能性もあるが、ひとまずはそのように考えておきたい。

結論

ブルーを殺したのはセシャトである可能性が高い。

【Phase1-17】考察まとめ

Phase1の考察まとめ

f:id:NeutralDigamma:20200214213313j:plain ここまでで、当ブログがPhase1で推理可能と判断した謎の解説は終了である。以下を答案として、いったん筆を置くことにしたい。

  • AOUの裏切り者は、リリャである。
  • COUの裏切り者は、アイシャである。
  • ABNの裏切り者は、ナオミである。
  • ACRの裏切り者は、ヌールである。
  • 地下研究所は、コンピュータの中の仮想空間である。
  • 神のシナリオとは、全人類を仮想空間に移住させることである。
  • 三人の王たちは、真の黒幕ではない。
  • 環境破壊8MSの首謀者は、藤治郎である。
  • ブラジリアテロの実行犯は、藤治郎である。
  • ジェストレスは、藤治郎の別人格である。
  • 藤治郎とセシャトは、両者とも神の代理人またはその賛同者であり、互いにそれを隠している。

これくらいで合格点がもらえることを願いつつ、Phase2にて答え合わせができることを期待したい。

解けなかった謎

f:id:NeutralDigamma:20200203000607j:plain 現時点で説得力のある解答を出すことができなかった謎も多い。代表的なものは次のような点である。

  • 青都雄は何者か
  • フィーアの目的は何か
  • セシャトの謎スキルの正体は何か
  • コーシュカの脳(パンドラ)の秘密は何か
  • リリャの脳(粘土の少女)の秘密は何か
  • ギュンヒルドのシールドが出なかったのは何故か
  • 鈴姬の金色のガントレットは何か
  • 千年間眠り続けるつもりだった人物は誰か
  • セシャトが呼び戻したい二人とは誰か
  • 上位世界はどうなっているのか

これらの多くはおそらく推理不能であり、今回の作者からの出題には含まれていないであろうというのが当ブログの見解である。

嵌まらないパーツ

f:id:NeutralDigamma:20200214160407j:plain 一部に、途中までは推理可能であるものの、どう活かせば良いのかわからない手がかりも存在する。パーツの候補はあるのだけれども、それを嵌められる場所が見つからないという状態である。

一例を挙げると、仮装喫茶「モンスターパーティー」のマスターが被り物を取らなかったのは、ギュンヒルドと同じ顔をしているからではないか(つまり、工場生まれの兄弟は全員クローンなのではないか)という仮説を立てることが可能である。しかし、仮にそうであったとして具体的にどの謎が解けるというものでもないため、そこで推理が止まってしまうのである。

まだ何か見落としがあるのかもしれないし、高度なミスリードなのかもしれない。あるいはPhase2以降の伏線である可能性も考えられるであろう。

最後に

当ブログの記事が、物語の理解とさらなる考察に役立てば幸いである。