【Phase1-9】ACRの裏切り者は誰か
描写が少ないACR陣営
リーテバイルに関しては、大浴場騎士団に強く賛同していることが明らかであり、ほぼ疑う余地がない。
しかし、ACR陣営はリーテバイル以外の人物の出番が少ないため、会話を手がかりとして絞り込むことが困難である。イシャクとアブドゥは比較的怪しくなさそうな人物であるが、両者ともクールな性格であり、本心をうまく隠している可能性が否定できない。他の陣営とは違う考え方が必要なようである。
第九最上騎士団の掌の上
シリルの暗殺事件は、大浴場騎士団の身内によって起こされたことが示唆されている。ACRに関しては、こちらから考えてみよう。
暗殺事件の経緯
「しつこい虫」とは、おそらく超小型ドローンのようなものであろう。
耳から入って……
自爆。
さらに、ペントハウスにミサイルが直撃。
こちらもドローンだという。
自動兵器召喚
ここでTIPSの検証を行う。
ACRの人物の中で、ドローンを操作する能力を持っているのはヌールただ1人である。TIPSを推理の根拠とするのはやや反則気味な感もあるが、類似の仕掛けは前作にも存在した。他の手がかりが極端に少ない以上、作者が想定した解答はこれで正しいであろうというのが当ブログの判断である。
結論
ACRの裏切り者は、ヌールである。
【Phase1-8】ABNの裏切り者は誰か
イェルダット・シャヴィット、やってられっか
レア、ファトマ、ステファニアの3人は相当怪しいが、最終戦で味方を撃てという命令を拒否したことで疑惑が薄れる。
また、彼女たちは大浴場騎士団のメンバーではないので、ナイマたちが組織的サボタージュをしているという情報を得る手段に乏しいということも、第九最上騎士団のスパイであることを否定する要素である。
死にも殺しもしない戦い方を見せてやる
ナイマは、クロエや鈴姬に劣らず非常に熱い。素直に読む限りは、ABNの中で最も裏切り者の可能性が低そうな人物である。
わうわうの方のナイマもこの通り、ほぼ疑う余地がない。
スタニスワフか、ナオミか
残りはスタニスワフとナオミの二択となる。
スタニスワフは「死ぬな、殺すな」の理念を説いている。「神を試せと唆す悪魔の声」とは、いかにもABNらしい表現である。
それに対する返答。ナオミは「死なない」と言っているだけで「殺さない」とは言っていない点が気にかかる。場合によっては殺しても良いと思っているのかもしれない。
乾杯の場面。これがスタニスワフの最後のセリフである。一方のナオミには、このように積極的に賛同している描写はない。したがって、少々根拠が弱い感はあるが、ここは消去法でナオミとしておく。
結論
ABNの裏切り者は、ナオミである。
【Phase1-7】COUの裏切り者は誰か
鈴姬、百武
鈴姬は、都雄の理念の理解者であるどころか、たったひとりでも平和のために戦いたいと願うような人物である。
百武も「死ぬな、殺すな」の理念に賛同している。また、鈴姬への片思いが傍目にも見て取れる、わかりやすい人物であり、彼が鈴姬を裏切ることは考えにくい。
スジャータ、ルクシャーナ、アンドリー
スジャータは、COUでサボタージュがバレたという情報を都雄に伝えた。
ルクシャーナは上官に対してキレた。
アンドリーはそれを庇った。スパルナの面々は3人とも、裏切り者であったとすればありえないような言動である。
アイシャ
アイシャは、COU分析官が「濡れ衣」を晴らせと伝えてきたとき、真っ先に「頑張って戦わないといけないですねぇ」と発言した。
鈴姬がついに「殺すことを許可」したとき、「良家のお嬢様の武芸ごっこ」だと思っていたことをアイシャは告白する。これはこれで、軍人としては立派な考え方であるが、大浴場騎士団の理念に心から賛同していなかったことは明らかである。
AOU以外の陣営に関しては、数少ない手がかりから推測するしかない。COUの裏切り者は見たまま読んだまま、アイシャという解答で問題ないであろう。もし、アイシャ以外の誰かが巧妙な演技をしていたとしても、それを疑えるような情報は現時点ではなさそうである。
結論
COUの裏切り者は、アイシャである。
【Phase1-6】AOUの裏切り者は誰か
裏切り者のメール
都雄が大浴場騎士団を結成した直後、団員が6人しかいない段階で送られたメール。したがって、これはAOUのガントレットナイト6人のうち誰かが送ったことが確定している。
最初の記事にて説明した通り、推理の前提として「誰かの別人格がメールを送った」という考え方は当ブログでは採用しないので、都雄は自動的に外れる。
【Phase1-1】読者の勝利条件は何か - 謎解きは世界大戦のあとで
ジェイデンの可能性
独自の平和軍結成などと夢見がちであったり、都雄(ミャオ)にベタ惚れの態度を隠さないジェイデンが、実は裏切り者という線は考えにくい。
疑う要素があるとすれば、本編のラストくらいであろうか。ここは少々解釈が難しい場面であるが、今後の記事にて考察する予定である。いずれにしても、これだけでは何の証拠にもならないし、「どこへだって一緒」と言うような人物がその相手を悲しませるはずがないと、ひとまずは考えておきたい。
残り4人の可能性
他の人物に関しては、これまでの別記事にて検討した。未読の方は、本記事を読み進める前に参照されることをお勧めする。
【Phase1-2】ギュンヒルドは裏切り者なのか - 謎解きは世界大戦のあとで
【Phase1-3】クロエは裏切り者なのか - 謎解きは世界大戦のあとで
【Phase1-4】コーシュカは裏切り者なのか - 謎解きは世界大戦のあとで
【Phase1-5】リリャは裏切り者なのか - 謎解きは世界大戦のあとで
さて、手がかりは洗い出したものの、最後の二択に関して決め手に欠けるのが正直なところである。そこで、まずはメタ的な視点で「作者は、読者の思考をどのように誘導したいのか」と考えてみたい。
最も疑いにくい人物
前提として、この作品は「ひぐらし」「うみねこ」の流れを汲む推理ゲームである。そして推理ゲームでは、特に「うみねこ」の1話目に顕著であるが、読者が最も疑いにくい人物が真犯人というのが、ある意味でお約束である。
この考え方でいくと、あまり考えずに読み進めた読者が最初に疑うであろうギュンヒルドとクロエの2人は、逆にシロである可能性が高い。また、ジェイデンは最後に青い身体で出てくるし、都雄はおかしな別人格が出てくるので、根拠はないがなんとなく彼らが怪しいと思ってしまう読者もいるであろう。
もう少し読み込んだ読者は、コーシュカだけが都雄の理念に賛同していないことに気づくであろうが、さらに考察を進め、リリャが本編終盤にて別人に変わっていることに気づいた時点で、初めてリリャを疑うことが可能である。
この構造を考慮すると、読者から最も疑われにくいポジションの人物はリリャであり、したがって作者はリリャを真犯人(裏切り者)に設定しているはず、というメタ推理が成立する。
クロエの動機
メタ推理ではない、正当な推理の道筋は、クロエがリリャを殺害した動機を推測することであろう。
そもそも、味方を手にかけるというのはそれだけで軍法会議ものであり、制度次第では死刑もあり得る行為である。その黒い印象に反して正義感の強いクロエがそこまで重大な決断をしたとなれば、それはリリャのことを完全に敵と認識している場合以外には考えられない。クロエを信用するならば、リリャは裏切り者でなくてはならないのである。
結論
AOUの裏切り者は、リリャである。
【Phase1-5】リリャは裏切り者なのか
言っておくニャウ
無人兵器群がいなくなって、実戦に引っ張り出された訓練生たちに、「死ぬな、殺すな」の理念を説こうとするクロエとリリャ。
初見では、なるほどリリャも案外良いやつなのだなと納得してしまう場面であるが、注意深い読者は違和感を覚えるであろう。
クロエに任せるニャーオ
リリャは、自分は馬鹿だから、難しいことは全部クロエに任せると言っていたはずではなかったか。
いつから彼女は、ディメンジョンコンテナで自爆すると云々、シールドを一度破られると云々等、難しいことを言うようになったのか。これではまるで別人のようではないか。
13コンボ、フォーウ
フラグメント15、ギローイ研究所の地下にてギュンヒルドが目撃したリリャ。つまらないパズルゲームとは、わにゃドラのことなのか。
けれども、フラグメント7ではとても楽しそうに遊んでいたのである。都雄によればリリャは相当のベテランらしいし、頼み事の見返りに「星屑のスクラブ」800個を要求するくらいハマっている様子であった。また、コーシュカがわにゃドラを始めたのはリリャよりも後であったことが示されており、リリャがコーシュカに話を合わせるためにやらされたというのでは辻褄が合わない。
さらに、以前の記事で解説した通り、フラグメント15の時系列は本編の終盤であることがほぼ確定している。
【Phase1-2】ギュンヒルドは裏切り者なのか - 謎解きは世界大戦のあとで
となると、これは終盤でリリャが別人化していることの証拠ということになるではないか。
あなたは誰なんですか
グレイブモールの仲間であるコーシュカやクロエが、リリャの変化に気づくのは当然であろう。猫語で喋れば誤魔化せるというものではない。
だから、クロエは訊いたのである。目の前にいる彼女はひょっとして、お馬鹿なリリャの中に眠っていた別人格なのかもしれないと思ったから。しかし、返ってきた答は「リリャだよ」。ここに至って、クロエはリリャが以前の彼女とは違う人間であることを確信したのであろう。
結論
リリャは、本編終盤にて別人に入れ替わっている。ただし、裏切り者であるという直接的な証拠は見つからない。
【Phase1-4】コーシュカは裏切り者なのか
オラが滅ぼしてやるっぺよ
本編「第3の適性」にて、コーシュカは自ら「世界を滅ぼしてやる」と発言してしまっている。辛い思いをしたクロエを慰める文脈ではあるが、これが本心だとすれば、第九最上騎士団の思想に近いようにも思える。
さらには、「都雄たちには同調圧力で従っただけ」と、堂々と地の文で語られる。実際、コーシュカが人間を殺さないように気にかけるような描写は物語を通して皆無に近く、ますますに不穏である。
肉で出来た身体なんか捨ててやる
ところが最終章で、コーシュカの真意が明らかになる。これは、どうやら「自殺」をしたかったが叶わなかったというように解釈できる。
コーシュカの最期
身体を捨てられることが、喜びに打ち震えるほど嬉しいらしい。理由は不明であるが、彼女が「パンドラ」と呼ばれる特別な存在であることに関連している可能性が高い。
しかし、身体を捨てることがコーシュカの最終目的だったと考えると、スパイ疑惑は弱くなってくる。第九最上騎士団の目的は、戦争を起こして文明を壊すこととされているが、コーシュカは人類がどうなろうと関係ないというような態度なので、そんなものに協力する動機がしっくりこないのである。
メタ的に考えると、ストーリー上重要な秘密を「パンドラ」として抱えていそうであるため、それによって疑惑が薄れる側面もある。
結論
コーシュカは怪しいといえば怪しい人物であるが、裏切り者と断定するには根拠が乏しい。
【Phase1-3】クロエは裏切り者なのか
生きて、帰れたらの話ですがね
クロエは、本編の最終章にて極めて不審な行動を取る。味方のはずのリリャに対し、空中で鎮圧用の電撃を流して行動の自由を奪い、ミサイルを直撃させて殺害してしまうのである。
このような暴挙に及んだのは、クロエこそが第九最上騎士団のスパイであった証拠なのであろうか。
あなたは誰なんですか
しかし、前段の描写を見ると、クロエはリリャに対してのみ何らかの疑惑を抱いていたようである。この問題については記事を改めて検討する。
都雄顔負けの熱血
大浴場騎士団結成時のクロエは、都雄に心酔している様子である。
停戦前のラストスパートが明らかになった際、クロエは「騎士団として何かできることはないのか」と都雄に食ってかかる。
クロエは、訓練生たちにも「死ぬな、殺すな」の理念を説こうとする。
これら全ての態度が演技であったと考えるのは無理があるように思える。クロエが裏切り者であったならば、そこまでする必要はないであろう。
結論
リリャの殺害以外には、クロエの言動に不審な点は見つからない。その点さえ説明できるならば、彼女が裏切り者である可能性は低いことになる。