謎解きは世界大戦のあとで

キコニアのなく頃に考察

【Phase1-1】読者の勝利条件は何か

プレイヤーの席なんて与えない?

f:id:NeutralDigamma:20200129071655j:plain ゲームを始めよう。「難易度はかなりの上級」。これが我々読者にとっての難易度かどうか定かではないが、そうだとすれば作者の挑戦を受けて立ちたい。

ここで気になるのは、ストーリー紹介に含まれている次の記述である。

ゲームのルール?難易度?私たちが決めるし、あんたには関係ない。
お前たちは取ったり取られたりして、私たちが喜ぶような喜怒哀楽を見せればいい。
いいこと?勘違いしないことよ。

お前は私の対戦相手じゃない。私を楽しませる為の、駒に過ぎないの。
今度のゲームは、
あんたにプレイヤーの席なんて与えない!

タイトル画面のメッセージには難易度が明示されているため、語り手は同一ではないことがわかる。それぞれ、誰が誰に語りかけているのであろうか。

少なくとも、ストーリー紹介の方を「今度の作品は、ただの読み物です」という作者からのメッセージなどと思うべきではなさそうである。「あんた」が我々読者への呼びかけでないとすれば、「プレイヤー」とはあくまでも作中ゲーム盤のプレイヤーを指すものと解するのが自然である。

その口調から、語り手は前作「うみねこのなく頃に」の魔女のような存在であると考えられる。彼女たちが引き続き魔女として登場するとは考えにくいが、いずれにしても「今度のゲームは」と言うのだから、「あんた」とは前作でプレイヤーの役を演じた誰かである可能性が高いであろう。

何が読者に問われているのか

f:id:NeutralDigamma:20200129090808j:plain 「なく頃に」シリーズの例に漏れず、読者が考えるべきことは明示されていない。解くべき謎の判断自体が読者に委ねられており、したがって解ける保証もないという意地悪なゲームなのである。

しかし、難易度が読者にとってのものだとするならば、何らかの「読者の勝利条件」が存在すると考えられるであろう。また、それは作中「プレイヤー」の勝利条件とは必ずしも一致しないことに留意すべきである。

Phase1の出題は、4人の裏切り者の特定

f:id:NeutralDigamma:20200129094154j:plain 今作にて、最もあからさまに提示されている謎は「24人の中に潜む第九最上騎士団の団員は誰か」である。当ブログでは、一般的なミステリーでいうところの「犯人当て」に相当する問題が4問あり、中でもAOUのそれがメイン問題であるものと解釈している。

ただし、これらが現段階で解ける問題であると考えるならば、「別人格が裏切り者であることはない」という仮定が必要であろう。ガントレットナイトの多くは多重人格であるらしいが、第九最上騎士団はメールで連絡を取っている。ならば、いくら「心の中のドア」とやらを閉めても履歴が残ってしまうはずである。後出しで「実は、他の人格に知られずにメールを送受信できる」という設定が出てくる可能性もあるが、それを認めてしまうと推理不能なのでメタ的にあり得ないと考えておきたい。

この仮定に同意できない向きもあろうが、我々は前作の教訓を思い出すべきであろう。作者としては推理可能な謎を出題しておき、正解を知った読者が読み返したときに「これはそういうことだったのか」と感心してほしいのである。目立つ謎は解けるように作られていると考えるのが妥当であろう。

解けない謎もある

f:id:NeutralDigamma:20200130233112j:plain 一方で、例えば「鈴姬の金色のガントレットは何か」といった謎は、現時点では正解が出せない可能性が高い。「こういうことではないか」と「予想」することは可能であるが、推理をするにはおそらく情報不足であると思われる。

裏切り者の特定だけでは作者が設定した勝利条件に満たないかもしれないが、その場合でも、現時点で解答可能な問題を探すことが肝要である。